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廣部功一さん(編み物作家・会社員/京都市右京区)

   

今回は、京都市右京区の廣部功一さんをご紹介します。

功一さんは、男性では珍しい編み物作家さん。ご長男の出産祝いにもらった毛糸で帽子を編んだのをきっかけに、主に麻の手提げカバンを編み続けて約14年。最近は、YouTube配信にはハマっていて、現時点でのチャンネル登録者数は800人をこえます。

約20年後にむかっての“退職活動“として会社勤めと作家活動を絶妙にリンクしたライフスタイルはうらやましい限り。日常のなかで、ものごとを一歩引いて俯瞰して楽しむ姿勢は、そのまま廣部さんの作品の魅力として表れているのではないでしょうか。詳しくお聞きしました。

廣部功一(ひろべこういち)さん

平日は会社勤務、平日夜と週末は編み物とYouTube配信に勤しむ
カレーとおでんづくりが得意

編み物を始めたきっかけは?

今年で編み始めて14年になります。きっかけは、子どもが産まれた時、お祝いにいただいた“毛糸“との出会いでした。それで子どもに帽子を編んだのがスタートです。

初めて編んだのは、生まれたばかりの息子さん用の帽子

 

その後、麻ひもかばんにも挑戦し、時間さえあれば編むことに没頭しましたね。ある日、近所の手作り市に、試作で作ったかばんも含め出品したら、すんなり売れたんです。嬉しかったですね。家族と一緒にお出かけや旅行も兼ねて各地のイベントにも出店しました。出店中もずっと店番をしながら編み続けていたら、それがけっこう注目されていました。男性の編み姿は珍しかったようです。

編み物作品がほぼ単色、どうしてですか?

もともと多色使いが苦手で。大学時代は美術部で、最初はたくさんの色を使って絵を描いていましたが、うまくいかず悩んでいました。ある日、自分が飼っていたうさぎを墨絵で描くと、納得いく絵が描けて。濃淡・陰影での表現が自分には合っているなと。仕事でもプライベートでも、そんなふうに“削ぎ落してシンプルにする”というのが自分のベースにある気がします。もちろん、「この青とこの黄色で編んでほしい」とオーダーいただき編むことも。僕の場合は、色彩感覚はお客様にお任せしたほうがうまくいきますね。

単色で編んだバッグ

 

仕事のストレスで参った時期もあったんですね。

勤続10年目頃、精神的に参ってしまった時期がありました。
弱った自分から抜け出すために、比叡山の僧侶・酒井大阿闍梨(※1)のお話を聞く機会があり、身口意の三業(しんくいのさんごう)を知りました。今の自分にはとにかく体を動かすことが必要だと感じ、家から会社まで往復約15㎞を毎日歩いて通勤しました。朝5時に起き、京都卸売市場を通ったり朝食を摂ったりと、新しいルートを開拓しながら通勤することで、ずいぶんと心も整っていきました。おかげで足腰も鍛えられました。

※1酒井 雄哉(さかい ゆうさい、1926年(大正15年)9月5日 – 2013年(平成25年)9月23日 は、天台宗の僧侶。比叡山延暦寺の千日回峰行を2度満行した行者として知られる。天台宗北嶺大行満大阿闍梨、大僧正、比叡山一山 飯室谷不動堂長寿院住職を務めた。

 

趣味でマラソンもされていたんですね。

勤め先が京都マラソンのスポンサーになっていたため、成り行きで出場しました。その頃はまだ自信がなく一度きりのつもりが、結果を出したくなり翌年も出場しサブ4(4時間切り)を達成しました。その後、地方のマラソン大会や100kmウルトラマラソンにも出場しましたね。

地元の嵐山・渡月橋からは右奥にいつも比叡山がみえる

 

1番過酷だったレースが、比叡山で開催された比叡山トレイルランレース(※2)。先述の酒井大阿闍梨が修行されたコースの一部でもあり、参加者の半数ほどしかゴールできない難関レース。あまりにも辛かったのですが、なんとか完走してめでたく燃え尽き、8年間続けたマラソンはこれで終わりにしました。

 
※2比叡山トレイルランレース
比叡山で開催される走行50㎞のトレイルランニング。厳しい参加企画をクリアしたものしか出場できない。制限時間11時間だが、参加者の半数以上がリタイアするほど過酷なレースの大会。

 

歩くことやマラソンを通して実感したことは?

同じことを均一にきれいに繰り返すことが自分には向いているとわかりました。歩くのもマラソンも編むのも、まるでマントラを唱えるような“業(ぎょう)”の感覚です。繰り返すことで集中力を高める、一つのことを深めることから、自分らしさが出てくる気がします。

 

起業塾(はたぼう塾)に来られたきっかけは何だったんでしょうか?

実は、大好きな編み物との向き合い方が分からなくなっていました。

売りたいのかどうか、でもとにかく編んでいたかったんですが、まずはもっと売る方に力を入れたくて塾にお世話になりました。ところが、課題を進めて行くと「もっと自分のことを知ってもらいたい!人の役に立ちたい!」と思ってもいなかった違う自分に気づくことができたんです。

普段の事務職では味わえない、直接お客さんに「ありがとう!とか「バッグかわいい!」と喜ばれることが自分にとって1番やりたかったことだと気づくことができました。数がたくさん作れない分、作る嬉しさをシェアしたい自分に出会うことができました。

作家としてのスタンスを客観的に認識できたのが、はたぼう塾に行った大きな成果でしたね。

真ん中が廣部さん はたぼう塾15期のお三方で

 

たくさん売りたいというより、作品を好きになって欲しい

1つの作品は、だいたい10時間かけて編んでいます。どれも愛着があります。

なので、僕の作品を好きで、本当に欲しいと思ってくれる方、作品をかわいがってくれる方に少しずつお届けしたいと思っています。実際、そういうお客様像を描けたのも塾のおかげでした。

ご自宅ギャラリーには麻カバンの作品がずらり

 

YouTubeチャンネル登録者数800人超えですね、すごい!

編み物YouTubeチャンネル、初投稿から数年間は放置していたんですが、今年(2022年)4月ごろ何気なく確認したら700回以上再生されている動画があり、チャンネル登録は40人もいて頂いている事に驚きました。

会社勤めてたまたま映像や編集知識や技術も増えていたので、「これはやれってことだな!」と思い、再開。この4月から3か月で40人が800人になって自分でもびっくりです。

 

動画配信のノウハウはどこかで学ばれたんですか?

会社でたまたまそういうポジションにつき、マスターせざるを得なくなって。コロナ渦への対応で、社内研修を全てネット配信に切り替えるプロジェクトのリーダーになったんです。カメラ・音声・照明・パソコン・編集ソフト、おかげでめちゃめちゃ詳しくなりました。

社内表彰制度があるのですが、表彰式をまるでアーティストのライブのオープニングのような生ライブ配信に演出すると大変盛り上がりました。学生時代、卒論を手書きで書くなど、超アナログだった僕が、今では会社でIT活用促進課長です。ふしぎな巡りあわせです。

 

YouTube配信、かなり楽しんでおられますね~

編み物作家さんの知り合いが全国にできて楽しいです。チャットで質問してもらえたり、いろんな発見があります。編んでる手元を見ていただきながら、フォロワーさんに求められる配信ができるようになってきました。再開して早々に、登録者数がすぐに500人を超え、今は800人くらいいてくださいます。

男性が編み物をしているビジュアルがなんだか珍しいそうで、裏方が向いてると自分では思ってたのですが、せっかくですから顔も出してみています。

 

今後はどのような活動をしていきたいですか?

動画配信をもっといろいろ試していきたいですね。YouTubeコメントにたくさん質問も頂いています。編み方に困っている方や、素材探しに苦労される方に、僕ができることをお伝え出来たらと思っています。また、出店している様子を動画にしたりもしたいです。コロナ前からやってきたことのおさらいをして、自分の活動を広めていきたいです。

地元嵐山のおすすめの景色は、左岸からのこの眺めだそう

 

当面はYouTubeチャンネル登録者数1,000人が目標です。

自分は運が良いと思います。職場ではチャンスが数年ごとに来て、ありがたく結果に繋げてこられました。年々、仕事の醍醐味は増してますし、いまは仕事と作家活動をどちらも面白くやらせてもらってます。毎日、会社から帰ったらすぐ編みたくて仕方ない僕の編み物作品を知ってもらえたら嬉しいです。

(取材・文/西原芽ぐみ、編集/畠中陽子)

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廣部さん、インタビューへの
ご協力ありがとうございました!

秘めた情熱と実行力がすさまじい廣部さん。

会社員をしながらの作家活動を
両方思いっきり充実させておられるご様子は
かなり羨ましいライフスタイル!

そんな廣部さんの作品、以下のリンクから
ぜひチェックしてみてくださいね!

 

廣部功一さんリンク集

▶YouTubeチャンネル「ちゃんの編み物」は→こちら

▶販売サイト「chan’S GALLERY」は→こちら

▶Instagram → こちら

▶Twitter →  こちら

 

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はたぼう

販促コピーライター・代表取締役畠通株式会社
畠通株式会社代表取締役社長・販促コピーライター。米国DMA公認ファンダメンタルマーケター。京都市上京区にて印刷会社の営業職を7年経て大阪府高槻市で自営9年目。日本郵便主催第29回全日本DM大賞プログレッシブ賞受賞(2015)・第30回全日本DM大賞銀賞・日本郵便特別賞受賞(2016)・第31回全日本DM大賞入賞(2017)・全日本DM大賞二次審査委員(2020)。同志社大学法学部卒。

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